東日本大震災による被災者支援京都弁護団について


Posted on 2月 4th, by admin in 反原発, 弁護士の目. No Comments

昨年11月29日,大飯原発の運転差し止めを求める裁判が,この京都でも提訴されました。原発ゼロの社会を目指すための,大変意義のある訴訟ですが,既に起こってしまった事故の被害者救済も,緊急の課題です。

東日本大震災による被災者支援京都弁護団は,その名の通り,震災による被災者をサポートすることを目的に結成された弁護団ですが,京都には福島から避難されてきた被災者が多いという事情もあり,原発事故への対応が活動の大きな柱となっています。当事務所の川中弁護士が団長を務め,私も含めて数十名の弁護士が所属しています。

弁護団は,これまで被災者が多く居住されている山科団地や伏見の公務員官舎等で定期的に法律相談を行い,皆さんの声を聞いてきました。住居や職場を失われた方,お父さんを福島に残したまま,母子で避難して来られた方等,事情はそれぞれ違いますが,先の見えない避難生活に疲れ,不安を抱えているという点では共通しています。
事故の当事者である東京電力に被災者の声を届け,原発事故によって被った損害を少しでも回復するため,ADRの集団申し立てを行う方針を決定,昨年7月に最初の6家族,21名の方々が先陣を切りました。以来三次にわたって申し立てを行なっています。
ADRとは,裁判外紛争解決手続の略で,原子力賠償紛争解決センターという国の機関に申し立てを行い,専門家から選任された仲介委員が,被災者と東電の和解を仲介するという仕組みです。裁判に比べて安価で,迅速な対応が期待できるという触れ込みだったのですが,多数の申し立てを捌ききれず,手続きがなかなか進んでいません。
しかも東電は損害をなかなか認めようとせず,特に避難区域外に居住していた方々については,ごく一部の費目について,しかも雀の涙ほどの金額でしか和解に応じようとしないなど,機能不全を起こしている状況です。
さらに,ADRを申し立てても時効が止まらない,という問題点があります。不法行為の場合,事故後3年で時効を迎える可能性があるため,いずれは正式な裁判を起こすしかない,というのが全国の弁護団の共通認識で,もちろん私たち京都の弁護団も,訴訟に向けた準備を着々と進めています。
正式な訴訟となると費用をはじめ被災者の方々の負担も大きく,長期間にわたる裁判を戦い抜くための体制づくりや,勝訴するための理論構成,証拠集め等,問題はまだまだ山積しています。まずは事故を風化させず,被害者救済に向けた世論を喚起することが,勝利への第一歩です。皆様のご支援を,よろしくお願いします。